注意事項

設計上

  1. 使用材料の選択については、特に注意を要する。材料には全て、特性上の一長一短があり、要求特性を全て満足出来る材料が、必ずしも存在するとは限らない。耐食性、耐熱性、導電性、耐疲労特性等、最も要求される特性をまず明確にした上で、妥協可能な範囲を設定する必要がある。
  2. 基本的には、ステンレス材が最もオールマイティーに使用でき、φ0.5mm程度以下であれば、ピアノ線に表面処理する場合よりも低コストとなる。ただし、ステンレス材も環境条件如何によっては激しく腐食し、特に塩素等のハロゲン元素イオンの存在下では、全面腐食とはならず、孔食等の局所腐食を生じるため、炭素鋼系ばね材料より始末に困ることがある。
  3. ピアノ線やオイルテンパー線等のばね用の高強度鋼線は、高強度材料故に種々の外的要因に対する感受性が高く(物理化学的に不安定)、表面処理における酸洗いによって誘発される水素脆化(割れ)には、特に注意を要する(後工程での脱水素脆性処理、いわゆるベーキング処理も考慮する必要がある。)。また、電気メッキの場合は、スパークによる早期折損等の危険性も多分に含まれるため、可能な限り、表面処理を実施しなくて済む設計(材質選定)をおこなうことが望ましい。
  4. 線径あるいは板厚などの材料サイズは、可能な限り該当JIS規格に規定されているものが望ましい。規格外のサイズでは、納期が月単位となり、また、コスト面でも非常に割高となる。
  5. ばねの寿命は、材料強度に依存するため、ピアノ線を用いても要求寿命を確保出来ない設計となっている場合は、設計スペックを変更する以外に寿命を確保する手法はない。しかしながら、一般的に設計スペックの変更には、スペース確保の意味から相手部品を含めての大幅な変更が必要となるケースが多いため、ばねの設計を最終段階におこなってしまうと、機構そのものを再設計しなければならない(機構そのものが成り立たない)ケースもありうる。
  6. JIS規格材料と言えども、線径、弾性係数、引張強度、表面粗さ、線クセ等は、ある一定の範囲でのバラツキを必ず内包している。そのため、ロット間またはロット内においても、ばねのコイル径、自由高さ(長さ)、荷重特性、低温焼鈍によるテンパーカラー(表面外観)等のバラツキ、あるいはピッチのムラなどは必ず発生する。
  7. 引張コイルばねのフック形状は、可能な限り単純(スタンダード)なもの(半丸、丸、逆丸、Uフック)が望ましい。特殊なものは機械による連続加工が出来ず、治具や金型を用いての手加工を加えなければならなくなるので、品質が安定せず、またコスト面でも非常に不利となる。
  8. コイルばねのコイル形状は、可能な限り円筒形が望ましい。荷重特性を非線形とするために止むを得ず、たる形、つづみ形、円錐形としなければならない場合もあるが、この場合、生産速度が上げられないためコストが割高となり、また品質も安定しない。
  9. 線間ピッチの大きな圧縮コイルばね、フック形状の複雑な引張コイルばね、アーム形状が複雑な捻りコイルばね等は、表面処理工程中にばね同士が絡み合い、変形や折損等を生じる危険性が高いため、可能な限り、表面処理を実施しなくて済む設計(材質選定)をおこなうことが望ましい

製図上

  1. コイル径は、必ず外径または内径で指示すること。引張コイルばねの場合は、外径で指示すること。設計計算で使用する平均径で指示した場合、実際の計測が出来ず、評価が曖昧となる危険性が高い。
  2. 圧縮コイルばねの場合は、その加工方法により、厳密には、端部に比べて胴部のコイル径が若干絞れるため、胴部(内径側にシャフトを用いる場合)、あるいは端部(外径側にケースを用いる場合)のいずれに適用すべきか、明確に指示すること。
  3. 引張コイルばねの場合は、コイル径のみならず、フック径も必ず指示すること。指示のない場合、コイル径とフック径は同一寸法であると見なされる危険性が高い。ちなみにコイル径とフック径が同一寸法である場合においても、フック径のバラツキは一般的にコイル径のバラツキより大きくなる。
  4. 自由高さ(長さ)は、寸法引出線を用いて明確に指示すること。例えば下図の様なケースでは、計測値が各々異なる。しかしながら、一般的には、圧縮コイルばねの場合、下図OO’の寸法(最大寸法)、引張コイルばねの場合、下図QQ’の寸法(フック内々寸法)が適用される。
  5. ばねの加工は、大雑把には全て曲げ加工による(薄板ばねの打抜寸法及び切断寸法を除く)ものであることから、その寸法バラツキはプレス加工によるそれとは桁が1桁大きくなる。よって、各種の形状を規定する寸法公差に、金属プレス加工品普通寸法公差や金属板せん断加工品の普通公差等の規格を適用すると、ほとんど製作が不可能となる

その他のばね設計解説

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